日本企業の製品は素晴らしい。
そして、品質管理もしっかりしているし、過去のトラブル対策も万全。
ですが、最近では特に
・ハイクラス=欧米メーカー
・ミディアムクラス=中国一流メーカー
・ロークラス:中国二流メーカー
といった流れが顕著のように感じます。特に、家電。
日本企業が強みを発揮しているポジションが良くわかりません。
その理由として考えられるのは、ブランド力です。
日本は人件費的には、欧米と同等クラスです。ならば、ハイクラスの製品で魅力を発揮する必要があります。
しかし、それが出来ていない。今回はその理由の一つとして考えられる「ブランド力」について考察をしていきます。
- ブランドとは承認欲求と自己実現
- 日本メーカーのブランド力が低い理由はフルラインナップメーカーだから
- フルラインナップメーカーが憧れられない2つの理由
- そもそも日本は高付加価値製品しか勝たん
- 日本のブランディング成功例はスノーピーク
- 中国も、ブランディングの重要性を理解している
- 日本企業のブランド力低下はフルラインナップメーカーだから「まとめ」
ブランドとは承認欲求と自己実現
そもそもブランドとは、承認欲求や自己実現(所有欲)を満たすものだと思います。
もちろん、それ以外にも
・信用を得るためのステータス
・やる気を上げる知覚
など、実利のあるメリットもありますが、最終的には「こんな製品を使っている自分」への満足感。
健全な市場原理ですよね。
欧米企業はブランドイメージが良い
欧米メーカーのブランド力は非常に優れています。
以前触れた、Appleだけでは無く、具体例を挙げればきりがありません。
・ロレックス
・グッチ
・ポルシェ
・ベンツ
・ラコステ
・ダイソン
など、持っているだけで気分の上がる素敵なメーカーばかりです。
ちなみに、ロゴが大きい服やバックは比較的安いと聞きます。これは、購入者を広告塔にする目的があるから。とも言われています。
ブランド力を上げるための製品が昔から存在しているのは、ブランド力への意識の高さを伺わせます。
日本メーカーのブランド力が低い理由はフルラインナップメーカーだから
では、高品質な製品づくりを得意としている、モノづくり大国の日本のブランド力が低いのはなぜでしょうか?
それは、フルラインナップメーカーだからです。
フルラインナップメーカーとは、廉価~高付加価値までの全てを生産・販売している会社です。
日本企業の美徳でもある、フルラインナップメーカー。
学生時代のお金に余裕が無い人でも、手に入る製品作りをしよう。という美しい考え方ですが、ブランディングには不向きです。
事例:SEIKOがフルラインナップメーカーである功罪
例えば、世界一の技術力がある。ともいえる「SEIKO」をその例として挙げます。
かつて、クオーツショック(圧倒的に精度の良いクオーツ時計を販売し、スイスのメーカーの多くを破綻に追い込んだこと)を起こした張本人です。
また、機械式でも世界一の精度をたたき出し、スイスのコンクールがなくなったほどの技術を持っていました。
そんなSEIKOのラインナップは幅広すぎます。(価格はあくまで参考値)
・クオーツ:2,000円代~40万台程度
・機械式:4,000円代~100万円以上
特に、機械式で価格が安い「SEIKO5シリーズ」は世界でも高い人気を誇ります。(私も3本持っています。)
多くの人に愛される素敵な会社。ですが、ロレックスやオメガのように、SEIKOを持っていれば満足(誇らしい)という人は少ないと思います。
SEIKOのハイグレード品である、グランドセイコーとロレックス。同じ価格なら、ロレックスの方が欲しいな。と思うのは私だけでしょうか?
※そういう私は、グランドセイコーを一本もっています。
つまり、フルラインナップメーカーは、多くの人に愛される反面、深い愛情や熱狂を持たれにくい。と言えそうです。
フルラインナップメーカーが憧れられない2つの理由
ここからは、フルラインナップメーカーがブランディングに適していない理由を2つご紹介します。
1,憧れない
私の大好きなSEIKOのところでも触れましたが、やはり憧れの観点では、フルラインナップメーカーは厳しいと思います。
数千円の時計と、100万円の時計でも、ぱっと見は同じSEIKOだからです。
時計好きでは「いいねー!」という会話になりますが、ステータスシンボルとしては、最低価格がある程度高いメーカーの方が有利でしょう。
2.アンカリングが足を引っ張る
2つ目はアンカリングです。
アンカリングは最初に提示された数字や情報が、アンカーとなり、他の印象に影響を与えることを言います。
「このスーツ、通常8万円がアウトレットで2万円です。」を安いと感じるようなこと。
これが、フルラインナップメーカーのブランド力には、逆の作用を働かせてしまいます。どうしても、会社を知ってもらう最初は低下価格帯の商品になります。
よって、A社はリーズナブルな会社。というアンカーができると、そこから高級品を提供しても「A社安いと思っていたのに、びっくりした」となります。
逆に、ダイソンやルンバは、高めの製品を最初に日本に販売して(高級メーカーのアンカリングをして)低価格帯の製品を発売しています。
これが、正しいアンカリングの使い方でしょう。
そもそも日本は高付加価値製品しか勝たん
日本企業が世界で勝っていくためには、高付加価値な製品を販売するしかありません。(内需は除く)
それには人件費がかかるからです。
コストダウンには限界がある
コスト削減や効率化、機械化にも限界があります。
それは、どうしても全ての製品原価に「人件費」が計上されるからです。
全てが機械で生産される工場でも
・生産計画の管理
・品質の管理
・機械や工場の管理
・事務関係
など、どうしても人が必要になるからです。コストだけで勝つことは難しい。
そして、品質についても、機械化やノウハウの蓄積(一般化)により、大きな差を付けることは難しくなっています。
日本のブランディング成功例はスノーピーク
個人的に、キャンプグッツを販売しているスノーピークは、日本でブランディングに成功している、稀有な会社だと思います。
新潟の会社ですが、低価格帯の製品を出さないので、スノーピーク=高級でおしゃれ。の印象が浸透しています。
他の会社のハイクラス品だと、素人目からすると、高いか安いかわかりません。ですが、スノーピークなら「これは良いモノ使っているな」と初心者でもわかります。
私も、コールマンとスノーピークが同じ価格なら、スノーピークを選びたくなります。
これが、正しいブランディングの成功例だと思います。
中国も、ブランディングの重要性を理解している
ブランディングの事例として、欧米をメインとしていましたが、中国でもブランディングという考え方は浸透し始めています。
具体例としては「小米(シャオミ)」です。今や、世界のスマホ販売で、Appleを抜いて2位になったシャオミ。※一位はサムスン
シャオミはスマホの販売時に、販売数をあえて絞っていた経験があります。
つまり、手に入りにくいことによって、プレミアム感を演出してました。その結果、このような状態になりました。
・話題だけが先行する
・買えた人がSNSにアップして自慢する
・みんな欲しくなる(憧れる)
もはや、ブランディングはどの国でも必要とされる考え方です。
日本企業のブランド力低下はフルラインナップメーカーだから「まとめ」
今回は、ブランディングをテーマに、日本企業が苦戦している理由をご紹介しました。
よく、日本の不況は少子高齢化と言われますが、製造業については、ちょっと違うと思っています。
それは、世界を相手に勝負できるのが、製造業だからです。
世界という70億人を相手にしているのに利益が出ないのは、世界のニーズに合っていないから。とも言えます。
製品や品質は高いので、ブランド力が足りていないのかもしれません。
まだまだ、日本ならではの強みも魅力もあると思うので、今後はブランディングがうまくいけばいいな。と思っています。
以上、考察でした。