今回は、「人生100年時代の経済」の書評です。
この一冊で、他の本5冊分の価値があります。それほど良い本だと思います。
タイトルから想像すると「LIFE SHIFT」のような、将来戦略についての本に思えました。しかし、実際には「老い」について考えることのできる本です。
そして、高齢者が苦労や辛さについて考えることができる本です。
・老いた先の未来
・なぜ、年を取ることは嫌なのか
・老人は社会の負担になるのか
・理想的な老後とはなにか
人生が100年(も)ある時代です。長生きを、幸せな未来にするか、不幸な将来にするか。
それは、あなた自身と、社会によって決まります。
せっかく長い寿命を得ることができたなら、楽しく・有意義に過ごせる未来を期待したいですよね。
そんな未来について考えることのできる、人生100年時代の経済の書評です。
毎度のことながら、書評というよりは、考察メインとなります。一緒に100年時代の社会について考えるきっかけになれば、幸いです。
- 人生100年時代の経済の概要
- 日本は少子高齢化の先進国
- 少子高齢化はずっと前からわかっていた
- 高齢者は、社会の負担になのか
- 定年退職という、強制リストラ
- 高齢者がお金を使いたくなる未来こそ、正しい経済
- 「人生100年時代の経済 書評」将来老いる人は読むべき「まとめ」
人生100年時代の経済の概要
まずは、この本の概要です。
人生100年時代の経済では、これまで当たり前に考えられていた「高齢者=弱者」という考え方の間違いを教えてくれる本です。
ITや医療の進化により、これからの高齢者は、これまでの高齢者とは違う人生を送ります。
高齢者が、世界で初めて長く生きる時代に突入したからです。
高齢者は、経済の観点から見ても、非常に強力な購買力を持ちます。その成功事例と失敗事例から、私たちの年の取り方について考えることができる本です。
日本は少子高齢化の先進国
ここであえて「先進国」という表現を使ったのには理由があります。
それは、少子高齢化社会は、今後グローバルで起こることだからです。つまり、その社会への適応が、最も早く行える可能性があるのが日本となります。
・高齢者が幸福な生活を送れる
・経済が困窮しないシステムを作る
・高齢者向けのサービスや商品の開発(購買意欲が増す製品づくり)
これらの活動が、最も早く進むのが日本になるはずです。
これまでも、人類は「困ったこと」に対しての課題解決をずっと行ってきました。
少子高齢化は課題の一つではあります。だからこそ、今後解決されていくはずです。
その解決法を、世界に輸出できるのが日本という、少子高齢化社会の先進国です。これが、日本の未来を切り開くきっかけになるかもしれません。
少子高齢化はずっと前からわかっていた
現在の人口比率はずっと昔からわかっていました。
なぜなら、たった2つの要素で将来の人口比率は予測できるからです。しかも、かなり正確に。
・出生率
・平均寿命
この2つの要素だけで、人口比率は予測できます。つまり、昔から、現在の少子高齢化は予測済みでした。
しかし、現時点でも具体的な解決策は出ていないように思われます。未来の不安を先延ばしにする。そんな政治や社会の傾向からだと思います。
実際に、今すぐ解決が必要な問題が多すぎるので、これは仕方ないことかもしれません。
しかし、もう先延ばしにはできない状況です。今すぐにでも、どうすべきかを考える時です。
高齢者は、社会の負担になのか
そもそも、高齢者は社会の負担になるのでしょうか。
有名なところだと、これらが課題と認識されています。
・年金支給のために、労働者世代の負担率が増えている
・医療費の増加
・高齢者が仕事をしないこと。
・高齢者の貯蓄率が高い(お金を持っている)
では、これらは、高齢者のせいでしょうか?
もちろん違います。社会が、そうさせているのです。
さらに言えば、これらの問題は2つに集約できます。
・高齢者の収入が無くなることの不安
・高齢者がお金を使いたい製品が無い
この2つの問題について、この後考察をしていきます。
なぜ、高齢者はお金を使わないのか
なぜ、高齢者になるとお金を使わないのでしょうか。人生100年時代の経済では、これらの問題が挙げられています。
将来への不安
将来の医療や年金制度はどうなるか知っていますか?
もちろん、全国民が知りません。法律やルールは変わる可能性があるからです。
「今の貯蓄で生活できるか不安」
「年金がいつまでもらえるかわからない」
こんな不安がある中で、消費をしようと思う人は居ません。
将来への安心こそ、購買意欲につながります。特に、安定したインカムが無い引退世代はなおさらです。
購買したいものが無い
また、購買したいものが無い。ということもあります。
私たち(労働世代)は、仕事に関するものを購入することがあります。
・スーツ
・筆記用具
・本
・鞄
などなど、仕事をするための消費が生まれます。
しかし、高齢者に向けた製品は魅力的で無い場合が多いです。なぜなら、高齢者は自分を高齢者だと思いたくないからです。
その理由については、この後ご紹介します。
高齢者だと思いたい高齢者は少ない
「もう、年だから」
そんな風に言う高齢者でも、自分を高齢者とは認めたくないものです。なぜなら、老い=悪いモノ。というマインドセットが自然に行われているからです。
あなたは、高齢者になった時、これらを買いたいと思いますか?
・シニア向けフード
・補聴器
シニア向けの食品をレジに持っていく時、どんな気持ちになるでしょうか?
補聴器をつけている姿を見られるのはどんな気持ちでしょうか?
けして、自慢できる行為に思えないと思います。
・有機野菜
・天然物の魚
・スマートウォッチ
これらを買う時は、少しだけ誇らしい気持ちになると思います。つまり、高齢者向けの製品とは、若者世代が購入するのような、少しかっこいいモノであるべきです。
高齢者が買いたいモノは若者が使うようなモノ
これまでご説明してきたように、高齢者専用品の製品を買いたいと思うインセンティブは少ないです。
少し想像してみれば、当たり前のことです。
もし、スマートウォッチの機能がそのままで、高齢者向けにデザインされていたらどうでしょうか?
買いたいと思いますか?
私は、そうならないと思います。しかし、スマートウォッチは、老いを感じない製品なので、高齢者でも買いやすいです。
ここが、高齢者向けの製品販売が成功するか。しないかの分かれ道です。
簡単に操作できるスマホも同じです。
・ボタンがやけに大きい
・製品名がダサい
こんなスマホを持っているのは「自分は高齢者で、最新のスマホは使えません」と言っているようなものです。
もし、本当に高齢者向けに販売したいなら、製品名を「ミニマリズムフォン」などの、今どきの言葉を採用して、売り出すべきです。
若者が喜んで使うのに、高齢者にも配慮されている。そんな製品作りが、全人口で最も貯蓄率の高い、高齢者が喜んで買い物をする秘訣になるはずです。
補聴器では無く、ハイスペックイヤホンがあればいい
個人的には、補聴器は要らないと思います。
補聴器にもなる、イヤホンがあれば良いと思います。それが、骨伝導などで、見えない場所に設置できれば完璧です。
・高音質の音楽が聴ける
・音を増幅したり、減らしたりできる
・ウェラブルデバイス機能がついている
こんな製品なら、若者も喜んで使うと思います。AirPodsのように、おしゃれなイメージが必要です。
ノイズキャンセリング機能もあれば、電車や込み合ったお店でも騒音に悩む必要はありません。
また、補聴器としても使えれば、高齢者にも優しいです。ウェラブル機能があれば、体調管理もできます。
さらに、販売台数が伸びるので合理化により、販売価格も安くなります。
こんな製品作りが、高齢化社会に求められるはずです。
定年退職という、強制リストラ
高齢者が大変なこととして、忘れてはいけないのが「定年退職」というシステムです。
定年退職は、考えてみると不思議なシステムです。
・労働意欲がある
・労働力がある
・労働に必要な知識や経験がある
こんな人が、特定の年齢に達しただけで強制的に仕事を終える必要があります。
定年退職が無い社長職では、最近スズキの会長職を退職した、鈴木修さんが91歳です。
つまり、人によっては90歳を超えても、重要な判断を行い社会に大きな影響を与える能力があります。
ですが、サラリーマンは、どんなに能力があっても60歳~65歳で引退を余儀なくされます。
平均寿命は着実に伸びているので、引退後に必要なお金はどんどん増えています。ですが、働きたくても働けません。
にも関わらず「税金を納めていない」や「医療費を圧迫している」と言われます。
高齢者が社会の負担になっているのなら、それは社会のシステムのせいに思えます。
人によっては、もっと長く働けるシステムの構築が必要です。
1日8時間、週5日労働以外の選択肢が増えれば、働きたいと思う人は増えるはずです。
働き方改革が、高齢者の労働市場への参入ハードルを下げることに期待です。
高齢者がお金を使いたくなる未来こそ、正しい経済
これまでご紹介してきた高齢者の負担。
・将来への不安
・買いたい製品が無い
・強制的に仕事を奪われる
これらが解決することで、高齢者はもっとお金を使いたくなります。
社会に出て、あらゆる人と関わり、有意義に過ごすことができます。
これは何も、高齢者だけが得をする話ではありません。将来老いる全ての人にメリットがあります。
「年を重ねても幸せな未来が待っている」
「高齢者になったら、こんなことをしたい」
そんな未来を描くことができれば、全ての世代の未来が明るくなるからです。
「人生100年時代の経済 書評」将来老いる人は読むべき「まとめ」
今回は、人生100年時代の経済という本を基に、少子高齢化社会について考察をしてみました。
非常に難しい問題のため、私も今回ご紹介した内容が絶対に正解。とは言い切れません。
また、これまで高齢者向けに開発されたシステムやサービスを批判するつもりもありません。
ですが、伸びしろがある事は事実だと思います。
誰しもが老いを経験します。だからこそ、もっと良い社会が作れればいいな。そんな風に思います。
今回ご紹介したこと以外にも、多くの発見や知識を得ることができるので、よろしければ併せて人生100年時代の経済もお読みください。